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いまだに「?」の毎日(ほんのひとこと)

 はじめまして。合同出版の野木と申します。「ほんのひとこと」にはじめて執筆しますので、拙い文章でたいへん恐縮ですが、自分のことを少し紹介してみたいと思います。



 すでに創業者も亡くなり、廃業してしまったある零細版元に入社したのは34年前。はじめは編集者になろうと意気込んで出版社に入りました。


 その会社は新学期スタートの時期には編集も営業も関係なく、みんなで全国の小学校、中学校の学校図書館の巡回販売をしている出版社でした。版元グループでおこなっている同行巡回販売ではなく、1社単独の版元で地方の書店外商部の担当者といっしょに車に児童書の現物見本をのせて、職員室や図書室に見本を並べて、先生方に選定してもらう同行巡回販売でした。講談社、小学館、岩波書店、福音館などの他の版元から見本だけを借りて、いっしょに並べて、なるべく自社の商品を多く購入してもらうように、口ベタなりに先生方にセールスをしていました。他の版元の本ばかりが売れてしまい、上司から「お前はどこの版元の社員なんだ」と言われたこともありました。


 レンタカーで地方の公共図書館への巡回販売も自分でコースを組んで、事前にアポイントを取ったり、飛び込みで訪問販売したこともありました。地方によっては書店がない町や村もありましたので「実物がなかなか見られないので、とてもありがたい」と、公共図書館の司書に喜ばれることもありました。


 入社2年目の頃に東北地方の書店販促の営業で、注文ゼロという日が続き、精神的にもつらく「どうせまた注文はもらえないだろう」という気持ちで書店を訪問した時、その気持ちが店主にも伝わってしまったらしく、「きみの営業は営業になっていないよ。どうせ売れないと思って書店にセールスしても、書店は注文しないよ。わざわざ版元の営業さんがやってくるんだから、どんな儲け話を持ってきたのか、書店はワクワクして期待しているものだよ」と。そのときのその店主のひとことは駆け出しの若い自分にとっては学びの言葉でした。


 書店が本を注文して売ろうというとき、ベストセラーで売れている商品は別として、売れるかどうかわからないけれど、売れるかもしれないから仕入れて売ってみようという気持ちにさせることも営業マンの腕の見せどころであること、商品を動かすということは書店のこころを動かすことでもあるということを学びました。版元が単に書店に販売をお願いするのではなく、本気になって「いっしょに売っていきましょう」という姿勢や気持ちが書店に伝わることで本を並べてもらえることも学びました。そこに営業のしごとの面白さを感じました。


 並べてくれた本が売れればそれに越したことはありませんが、売れなければ否応なしに自社に戻ってくる返品の山をまのあたりにしながら、業界の厳しさを感じながら返品伝票にはんこを押していました。


 その会社に3年勤務して、2社目の児童書版元で営業として5年勤務したあと、縁あって今の合同出版に営業として入社して25年が過ぎました。


 いまだに、「この新刊は売れるのか?売れないのか?」「初版部数は正しいのか? 重版部数は正しいのか?」など、いろいろな「?」に毎日直面し、迷いながら営業の仕事をしています。


 ここ何年かで本の購入のされ方はガラリと変わってしまいました。書店に行って買うことが当たり前だったのが、スマートフォンやパソコンを使って、インターネット書店でクリック一つで、送料無料サービスで翌日手に入るのが当たり前になってしまいました。リアル書店は激減し、それでもリアル書店はあり、そこから購入する読者はいます。


 確かなことは、本はその人の置かれた状況によって救いになったり、癒しにもなったり、生きる指針や希望にもなるということ。そのことは昔も今も変わりません。本は人間にとってなくてはならないもの、かたちは紙であれ、電子であれ、無くなることはありません。であれば、何としても読者とつながっていきたい。


 小社は、読者とのつながりを大切にしていきたいので、工夫を凝らしながらSNSなどでの定期的な読者への新刊案内、オンラインイベント、書店さんへのメールやFAXでの新刊案内などをしていきます。


 これからも本を通じて伝えなければいけないことや、伝えたいことがあるかぎり、昭和のアナログ人間として自分がやれることはやっていきたいと思います。


 そして、出版協の理事としてお役に立てるかどうか、不安を感じています。力量不足であることは否めませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。



出版協理事 野木忠寛(合同出版



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