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印刷会社営業担当者に訊く! 2024年出版業界の展望(ほんのひとこと)

 新型コロナウイルス禍はほんとうに落ち着いたのか。ロシア・ウクライナ戦争、ガザにおけるイスラエル軍とハマスの紛争、地球規模で展開する諸々の「戦い」……それらに起因するエネルギー、原資材等の価格高騰、そして追い討ちをかける円安、さらには配送業者の「2024年問題」。単に商品価格へのコスト転嫁ができない状況のなか、出版者、印刷会社、製本会社、企業間で諸問題を共有すべく、業界改善に向けた持続可能性のヒントを、ベテラン営業担当者に訊いた。



―新型コロナ禍後、数年(約4年間)の「仕事量」の推移、増減は如何?


 当社以外も含め、全体量として年5~20%減っている状態で右肩下がりです。業界全体でも、特に4C商業印刷物の激減が目立ちます。


―印刷(書籍・文庫・新書等)業量で顕著な変化は?


 上記の要因の一つですが、再版点数の激減および再版部数減が如実です。新刊に関してはさほど点数減ではないのですが、初刷部数は確実に減っています。出版社側の対応として、2回分を1回にしての発注で製造コスト減を図っている会社もあります。また、在庫を自社の倉庫ではなく製本所で預かり処理という出版社もあります。


―物価高騰(紙代、インキ代、輸送費等)の折、2023年10月1日始動の「インボイス制度」、さらには2024年に運送会社における労務規程の改定による業務縮減があります。印刷会社が取り組む「コスト削減」の具体的な施策は?


 2024年問題で影響がでるのは、赤帽さん系の高齢者が多い事業者でしょう。車の台数が減ると思います。あとはバス、タクシー業界。運送会社の2024年問題は、一都三県中心の運送会社はあまり関係ないでしょうが、全国流通長距離ドライバーへの影響で、配本で地方書店に届くのが今以上に遅くなるのは避けられないと思います。印刷会社としては、印刷→製本→納品間の横持他運賃の削減を念頭に入れております。準大手の印刷会社では、工場敷地内で対応できるように印刷機削減によって空いたスペースに製本機を導入してCTP刷版→印刷→製本(梱包だけでなくセット作業等含)まで含む一連の受注に切り替えた会社もあります。とはいえ、そこまで余裕がある印刷会社はわずかなのですが、当社では支出金額や移動距離短縮等で経費の削減を図るのが精一杯ですね。


―版元はじめ懸念されるのは「事業承継」問題、印刷会社では如何?


 新型コロナ禍の前後で代替わりがずいぶん進みました。事業継承については自分の代までと考えている事業者が多い。ただし、原材料、電気代等の大幅値上げにより、親から事業を引き継いでも顧客との値上げ交渉もあって、短期間で「解散」を決めたという製本会社もありました。より良い将来が見えなければ、それは正しい判断なのかもしれません。新経営者の年齢が若いため、良くも悪くも会社に対する思い入れが少ないぶん、潔い踏ん切りができるのでしょう。時流としては、大きな負債を抱えるより「体力があるうちに廃業する」という考えが選択肢の一つにあります。今後は印刷会社、製本会社の廃業数が増えるでしょう。


―大手・中堅印刷会社におけるM&A(出版・印刷・製本含)の現状は如何?


 印刷会社というより、メインバンクもリスクを負いたくないですから銀行自体が「手法」として同業他社のグループ化やマッチングをすすめ、それぞれの会社が持つ「問題点」を補う指導をしています。さきにも話しましたが、従来の顧客による受注減を自社工場内の補強として、通常はCTP刷版と印刷のセット、設備のある会社では製本までの一括業務を同業会社から受注することで補うパターンがあります。製本業者自体も製本(中綴じ、アジロくるみ、投込み梱包、配送)分野の一括受け(自社内)で補う体制に切り替えた会社もあります。いま実行されている合併・統合やグループ化は、各事業の方向性の強化の一環なのです。


―印刷会社の営業担当者として2024年以降の出版界の展開をどう見る?


 事例としては、マンガがいち早くペーパーレス化で定着したのですが、予想以上にユーザーは「紙」での保有を選んでいるのが面白い。とはいえ、それを踏まえて好評の本を通常のマンガ本化してもなかなか部数が伸びない。また、様々な書籍関連の賞に選ばれても部数が伸びない。電車内ではゲームとSNSばかり。キンドルやノヴェルを読んでいる人は稀に見かけるぐらい。現状では電子書籍も自宅で読んでいるようです。結局、通常の書籍も電子書籍も読者層と読書の時間は被っている。図書館もかつてのように本を購入してくれません。小学生を対象とした課題図書でさえ、バラエティ色の強い本を選び「読む力」を支えているのが現状。以前より宣伝力はたしかに落ちたとはいえ電車内のステッカー広告は相変わらず強い。また、人気のブログの主に書籍を紹介してもらうなど、広告とは違ったかたちで情報発信する手立てもあります。「本」を売るためには、多様な「広告」「宣伝」「喧伝」の手法が重要な時代になったと感じております。



出版協理事 河野和憲(彩流社



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