梅雨です。(ほんのひとこと)

梅雨です。

 雨で思い出すのでは(ちょっと古めで恐縮ですが)、モップスの「たどりついたらいつも雨ふり」(これ吉田拓郎ですね)、井上陽水の「傘がない」でしょうか。はっぴいえんどの「12月の雨の日」なんてのもありました。

 「疲れ果てて~、い~ることは~」っと、明けることのない梅雨空の下を傘もささずに歩き続けているような、そんな気分になってくる、今日この頃です。

 ここ数年、年ごとに社会のタガがはずれていっているとしか思えないことが、あまりに次々と起こっているにもかかわらず、歯止めになるべき役割は果たされようともせず、「忖度」なる言葉が跋扈しています。まだ「忖度」している、という言葉が使われていることが救いなのかもしれない、と考えなければならないほどの惨状なのでしょう。もちろん他人事ではなく、われらが業界も、その惨状の真っ只中にいるわけで、「傘がない~」などとは、やはり言っている場合ではないのですが。「希望は実現されないから、希望なのだ」と言っていた哲学者がいたとは思うのですが、これは、やはりシンドイです。まあ希望は実現されたら、希望ではなくなるので、新たな希望が湧き上がってくる、と希望的にとらえればいいということなのでしょうが。

 さて、「忖度」云々と時を同じくして、また深い関係もあるとは思いますが、中小零細版元にとっても死活問題ともいえる、取次さんの流通が現状のままでは危機的状況なのだということが明らかになってきました。

 業界全体の問題であるにもかかわらず、なぜか中小零細版元に対して、取次からこうした問題に対して、何の説明もありませんし、もちろん、今のところ大手版元になされているような協力の要請もありません。


 何の説明も要請もないということは、その他に括られている版元の影響があまりに小さいので、労力をかけるだけ無駄だと考えているのかもしれません。あるいは、すでに、歩戻し、支払い保留などの条件をつけているので、さすがにこれ以上は無理だ、と判断しているのかもしれません。どこにその基準があるのかは、具体的には分かりません。

 公取も大手二社の協業を認めたように、独禁法云々よりも出版業界を、コンテンツ産業、はたまた文化産業を、ともかくも守ろうという気があるのではないかと思われます。書店も取次も、アマゾンがあればそれでいい、版元も1割か2割残ればいいとは考えてはいないということでしょう(文化行政が大いに「忖度」すれば、そう考えても不思議ではないのですが、まだそこまで「忖度」されていない、ということでしょうか。)。であれば、各取次あるいは取協として、すべての版元、書店と問題を共有するような姿勢があってもいいのではないかと思います。三者の協力があってこそ、なんらかの解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。


 話は飛びますが、アマゾンが直取引の「買い切り」方式を提案し、さらにその後、版元了解のもとに値引き販売をしたいということだそうです。これについては、すでに様々な所で見解が出ているので、繰り返しになりますが、値引き販売自体は、これまでのルールに従って、版元がマルB本として、全国の書店で同様の措置をとれば問題ないと思います。が、それをどうやって周知するのか、また、普通正味で入った書店と、アマゾンの直取引の正味差による値引き率の差などで、アマゾンが有利になることは避けようがないのかもしれませんが、それを補填するような仕組みができるのでしょうか。普通に考えれば、マルB本になったらまず返品して、買い切りの正味で再び仕入れるということになるかと思います。まずは、アマゾン一手販売の商品でない限りは、全国の書店に周知するのは、版元の倫理の問題といえるでしょう。こうした問題についても、取次各社は取引先書店さんを守る意味からも、公けの発言があってもいいと思うのですが、いかがでしょうか。

 なし崩し的に、気がついたらアマゾンだけが値引き販売をし、それを放置するということになれば、やったもの勝ちという、いかにも今の日本らしいありようではありますが。

 またまた話は飛びますが、出版業界は、文教予算と密接な関係があることは言うまでもありません。なんと言っても、日本の文教予算の貧弱さは、それでもなんとか今まで水準を保ってきているというのは、世界に胸を張れるほどですが、もう限界ではないでしょうか。現場の頑張りだけでは、どうにもならない所まできていると思うのですが、まだまだ削れる、と考えている人々もいるようで、驚くばかりです。それに伴って、教育現場への介入も著しくなっています。金をやるから、言うことをきけ、と言わんばかりかと。

 専門書には学術振興会の出版助成金があり、各大学の出版助成金もあります。あるいは、各種財団等の出版助成金もあります。小社も、そうした助成金を受けた出版物を数多く手がけています。というかそれがないと、なかなか刊行できない実態があります。そうした予算にまで「忖度」の影響が出ないことを祈るばかりです。

 もちろん、そうした助成金なしに大部な専門書を刊行できる体力のある、あるいはノウハウのある出版社もありますが、そうした版元ばかりではないので。


出版協理事 石田俊二(三元社

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