【声明】図書館における新型コロナウイルス感染症対策のための「来館者名簿」作成に反対する

 日本出版者協議会は、定款において、「出版の自由を擁護し、……もって出版事業の発展を図り、文化の向上と社会の発展に寄与することを目的」と定め、図書館の利用者の権利についても注視してきている。


 最近、図書館において、新型コロナウイルス感染症拡大の防止対策のため、「来館者名簿」の作成が行われているとの報道がなされた(5月22日付毎日新聞など)。日本出版者協議会は、この作成は図書館利用の自由や利用者のプライバシーを侵害するおそれがあると考える。

 「来館者名簿」など図書館の利用記録に関しては、1995年に、国立国会図書館で、サリン事件の捜査のためという理由で利用記録53万人分などが捜査機関に押収されるという事件があり、当時、日本出版者協議会の前身である出版流通対策協議会が国立国会図書館に対し、抗議と申し入れを行った。

 日本図書館協会は、5月14日、図書館を再館する際に、感染症拡大の予防策として検討事項を整理した「図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を策定した。それによれば、「図書館利用のプライバシー保護に最大限の配慮を行う」としているが、利用者の来館記録を作成し、保健所等の公的機関への提供を認めることが明記された。

 これに対して、図書館問題研究会(中沢孝之委員長)が、同ガイドラインは、図書館の「利用者の秘密を守る」ことを謳っている「図書館の自由に関する宣言」(1954年採択、1979年改訂)に反するとして抗議するとともに、撤回・修正を求める文書を日本図書館協会に提出した。

 その後、日本図書館協会は、「補足説明文書」を公表するとともに、5月26日、ガイドラインの更新版を公表した。

 更新版は、来館者名簿の作成や保健所などへの提供について、「実施の必要性の有無を各図書館が主体的に判断した上で行う」と、来館者名簿の作成については慎重に検討するよう要望している。しかし、来館者名簿そのものの作成について禁止していない。

 日本出版者協議会は、図書館問題研究会の抗議文書の趣旨に賛同するとともに、日本図書館協会「図書館の自由委員会」の「来館記録の収集は推奨しません。」(5月10日発信)を参考にして、来館者名簿の作成をつぎの理由から反対する。

1 来館者名簿作成は、「図書館の自由に関する宣言」(1954年採択、1979年改訂)に反し、図書館利用の自由と利用者のプライバシーを侵害する。

2 来館者名簿作成は、感染予防対策として実効性に乏しい。

3 来館者名簿の作成にあたっては、少なくとも個人情報保護条例に基づき個人情報保護審議会に諮る必要があるが、その手続きがとられておらず、収集目的や保存期間・管理方法および外部機関への提供方法の定めがない。


以上


2020年6月30日

一般社団法人日本出版者協議会

会長 水野 久

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