top of page

政府による日本学術会議新会員候補の任命拒否に抗議する

 このほど、菅義偉首相は、日本学術会議が推薦した新会員候補6人の任命を拒否した。この6人に共通していることは、安保法制や共謀罪など政府の施策に批判的な言動をこれまでとってきたことである。そのため、これが任命拒否の本当の理由ではないかとみられている。

 日本学術会議は、10月2日、この任命拒否について、内閣に対して①推薦した会員候補者が任命されない理由の説明、②2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない者の速やかな任命の2点を要望した。


 日本出版者協議会(出版協)は、この任命拒否は憲法が保障する学問の自由や表現の自由を侵害する重大な権力濫用行為と考え、日本学術会議の要望に賛同するとともに、政府に対して速やかに回答し任命拒否を撤回すべきであると強く訴える。


 菅首相は10月5日の記者会見で、任命拒否理由について質問を受けて、「個別人事に関するコメントは控えたい。総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断」したと述べるだけで、なんら具体的理由を示さなかった。任命拒否の説明責任を果たしたといえない。

 政府は、10月6日、公務員選定罷免権に関する憲法の条文を根拠として、「推薦の通り任命すべき義務があるとまで言えないと考えられる」とする内部文書(2018年11月)を公開した。

 これまでの「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否しない。形だけの任命をしていく」という政府見解(1983年)の明らかな変更である。さらに重大なことは、国会や国民に説明しないままなし崩し的に法解釈の変更を行ったことである。

 出版協は、こうした政府による憲法違反の行為の積み重ねは、立憲主義を蔑ろにするものであるとして、断固抗議する。


 日本学術会議は、これまで、①科学の振興及び技術の発達、②科学に関する研究成果の活用、③科学研究者の養成などに関する方策について、政府にたびたび勧告してきたが、2017年、「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表している。 これは、「安全保障技術研究推進制度」(2015年度発足)に対して、政府による研究への介入が著しいこと、その成果が時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用されることなどを理由に、その危険性に警鐘を鳴らしたものである。


 出版協は、日本学術会議が、今後もその設立目的である「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とする」を堅持し、活動することを期待する。


以上


2020年10月8日

一般社団法人 日本出版者協議会

会長 水野 久

東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B

TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104

閲覧数:196回

コメント


bottom of page