【声明】文部科学省の図書館の自由への介入に抗議する

 文部科学省は8月30日、各都道府県の教育委員会等に宛て「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」とする事務連絡を行なった。事務連絡では、内閣官房拉致問題対策本部事務局より協力依頼があったためとして、公立図書館・学校図書館等で拉致問題に関する本の充実を図ること、さらに拉致問題に関するテーマ展示等で児童生徒や住民がそうした図書等を手に取りやすくする環境を整備すること、を求めている。


 図書館が社会的問題や人権問題に関する資料を充実させることについて異論はない。ただし、それはあくまで図書館が自主的に判断する問題であり、権力が介入するべきではない。



 日本図書館協会は1954年に採択した「図書館の自由に関する宣言」で、「知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。」として、図書館が国民の知る自由の保障のためになすべきこととして、次のように記している。


図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである。


さらに、続けて次のようにその根拠を挙げている。


わが国においては、図書館が国民の知る自由を保障するのではなく、国民に対する「思想善導」の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならない。図書館は、この反省の上に、国民の知る自由を守り、ひろげていく責任を果たすことが必要である。


 私たちは、言論・出版・表現の自由を何より擁護する出版者団体として、この「図書館の自由に関する宣言」の立場に賛同する。



 文部科学省は、事務連絡には法的拘束力はなく、上記の「宣言」を逸脱する趣旨ではないと説明しているようだが、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課、同局男女共同参画共生社会学習・安全課、初等中等教育局児童生徒課の3課連名によるものものしい事務連絡が、図書館の現場にとって圧力となることは明らかであり、図書館の自由への介入といわざるを得ない。



 私たち日本出版者協議会は、文部科学省に強く抗議するとともに「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」の事務連絡を取消すことを求める。さらに、各都道府県教育委員会等には、同事務連絡に関わる協力を学校図書館・公立図書館等に要請しないように周知することを求めるものである。


以上


2022年9月29日

一般社団法人 日本出版者協議会

会長 水野 久

東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B

TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104


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