インターンK・H女史(大学院生)に「出版」について聞いてみた(ほんのひとこと)

最終更新: 2018年9月4日


 例年、弊社では一橋大学の大学院生(言語社会研究科所属)を「インターン」として迎えている。今年も8月上旬からひとりの女性(修士1年)が週2日(全10日)、社に来ている(もうかれこれ5年目ぐらいになるだろうか)。

彼女のインターン志望動機としては、仲間たちとともに学部生(横浜国大)のころから美麗な「文鯨」という雑誌(気宇壮大なテーマ「あたらしい言葉とは何か」を探求する雑誌ですでに2号まで刊行。第2号はISBNコードを取得してしっかりと販売しており、現在、第3号を鋭意編集中)を製作しており、当然だがその製作過程でさまざまな「壁」にぶちあたり、そんなこともあって実際の商業出版の「本づくり」の現場ではどんなことが生じているのかを見てみたい、ということが大きな理由となったようである。


 インターンを迎える窓口担当としていつも苦労するのが、プログラムとスケジュール調整、そしてさらには「本」のカタチ(四六判、A5判、菊判等)から紙(本文紙、付物紙等)・印刷(1C・4C、オフセット、活版等)・製本(上製・並製等)の概略説明をすることである。だが、今回のインターンK・H女史に関しては、すでに雑誌を製作している体験があったので、見本帖を見せながらもほんとうに「概説」なのだが比較的すんなりと納得してくれて、こちらもたいへんラクであった。

 さて、ルーティン業務としては、原稿素読み、朱入れゲラの突き合わせ校正、写真素材の収集など、きわめて地味な作業から始まって、弊社の書籍も出品されている装丁展を見学したり、出版協主催の研修セミナーに参加したり、出版協加盟社の版元、共和国代表・下平尾直氏にお話を伺ったり(聞けば下平尾氏は「文鯨」第1号に広告を出稿したとのこと。これが「縁」というか偶然にもほどがある)と、あっという間にインターン研修も折り返し点を過ぎた。


 そんなこともあって、これまでの「経験」を踏まえ途中ではあるが、K・H女史に「研修中」の感想をコメントしてもらった(愚生も一緒に勉強中なり)。


(1)「出版社」について

 「会社によって違いはあるかもしれないが、ひと月に出版する書籍数の多さに驚いた。彩流社では校正も編集もすべて一人の方が担っており、一つの書籍をつくるための作業量自体が多いが、そのうえ複数の書籍の製作を同時に進行していると知り、圧倒された。また、一人出版社ともなればその作業量の多さは想像に難くないが、トランスビュー社の存在を知り、多様な出版の在り方を可能にする取り組みだと感じた。また、本はつくれば終わりということではなく流通させる必要があるため、たとえば装丁が特殊で扱いづらければ書店で断られる可能性もあるなど、実際に誰かのもとに届けるということを意識して本をつくらなければならないと改めて感じた」


(2)「編集者」について

 「私は編集者になりたいという思いと書き手になりたいという思いの両方があり、これまでその二つをわけて考えていたが、共和国の下平尾さんとお話をして、それらは他者に言葉を届けるという点では一致しており、それを誰の言葉によって行うのかという違いなのだと感じた。またそのように考えると、小誌『文鯨』において私は、著者と編集者のあいだ、すなわち言葉をつくる過程ばかり見つめていたように思う。無意識的にも言葉は誰かに向けられたものであるにせよ、編集者という立場は言葉を届けるための役割を担っていることをもっと意識しなければならないと感じた。誰に届けるのかという観点から改めて『文鯨』について、編集について考えていきたい」


(3)「本をつくる」面白さと大変さ

 「従来の出版の在り方では存続が難しい今、本をつくって売るという過程の次の段階が必要なのではないか。それはすなわち、読者が本に対して議論や反応をする場をつくることである。SNSによってそのような場はすでに確立されているが、本に関連したトークイベントなども読者が反応できる場であり、今後さらにひろがっていくべきであると感じる。速さという観点から見れば、インターネットによって言葉を発することは容易になったからこそ、本は、時間をかけて、繰り返し考えることを可能にする存在としての役割を担っていく必要がある。もちろん小誌『文鯨』の製作において痛感しているように、世の中の情報の流れの速度、思考の速度、本をつくる速度を一致させることは難しい。それでも、言葉を発するという行為、すなわち、意識しなければ取りこぼしてしまうものを留めようとする営みには、時代を越えて残りうる本という形態がもっとも親密であると考えるため、本をつくり続けていきたいと感じる」


出版協理事 河野和憲(彩流社

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