新刊紹介でのカバー画像(書影)の使用について(ほんのひとこと)
- 2019年3月8日
- 読了時間: 4分
出版協では、毎月1回、理事会を開いている。そこでは、会の運営全般などが主なテーマとなる。そのほか、議題というほどではないが、出版活動上で疑問に思ったことや法律問題が出されることがある。今月の理事会で、ある理事出版社から、新刊紹介での書影使用について話題が提供された。
内容はこうである。 ある図書館から、一般利用者のために新着図書紹介のチラシを作っているが、書籍のカバー画像(書影)を載せて良いか? その了解がほしい、という電話があったが、 もちろん何の支障もないので、すぐに快諾し、もし電話での口頭了解では心細いのであればファックスを送ってくれればサインをするという返事もした。 そのあと、電話の相手に「こんな了解は本来要らないのではないですか?」と質問したところ、「いえ、最近はカバーも著作物という認識があり、ところによってはカバー画像(書影)なしで文字の書誌データだけを紹介している図書館もある。文字だけのレイアウトで決めたデザインの場合は大丈夫なのですが、絵や写真が入っているカバーの場合は了解を得るようにしています」という返答だった。 日頃、「本の宣伝になるのだから、書影を表示してもらって問題ない」と思っているので、私も同じように対応したことだろう。しかし、最近は、著作権者の権利意識が高まり、いろいろと問題になるので、書影利用の法律問題を考えてみるのもいい機会だと思った。
書影も著作物であることは間違いないので、無断で複写することは著作権侵害に当たることは確かである。しかし、著作権法上、一定の条件の下で、無断で使用できることが許されているものがある。文化庁のWebサイトは、著作物の無断使用について、5つを掲げている(「みんなのための著作権教室」http://kids.cric.or.jp/intro/03.html)。
①私的使用のために複写すること。つまり個人的にまたは家庭などの限られた場所で利用すること。②図書館などでの複製すること。利用者から調査研究の目的で複写の希望があった場合は、全頁複写不可・1人1部に限って複写してあげてもよい。③次の条件のもとで自分の著作物に他の著作物を引用すること。ⓐ引用する「必然性」(それ以外にありあえない)があること。ⓑ報道、批評、研究などの正当な目的があること。ⓒ自分の論文が中心で、引用する論文はその一部であることがはっきりしていること。ⓓ引用した部分を、「」で括るなど、自分の文章と引用した文とをはっきり区別すること。ⓔ引用した論文の題名・著作者名・出版社名・引用した部分の掲載頁の表示。④学校など教育機関の先生や生徒が教材を作ったり、生徒が授業で発表するために著作物を複写すること。⑤「非営利・無料」で、著作物を上演、演奏すること。
書影も著作物であることは間違いないので、上記の③にあてはまるように見える。しかし、書影は文章とは性質を異にするので、ここにぴったり当てはまらないような気がする。それでは、書影を無断利用する根拠は何か。書籍は、書影と文章とが一体となった一つの著作物と見て引用とみなすことはできないか。
ご存知のように、版元ドットコムは「書影や書誌は自由にお使いください」とサイトで表明している。このように態度を明確にすれば、以上の点は解決する。
出版協加盟社のサイトを見ても書影使用について見解を開示している出版社はないし、また、大手出版社の統一的見解が一般の人に分かり易く公開されている状況でもない。今後は、各出版社が自社のサイトや書籍の奥付で書影使用についての見解を示すことも一つの方法である。
最後に、カバーの著作権はそもそもどこにあるのかという問題もある。カバーには、デザイナーがすべてオリジナルで製作したものからデザイナーのものでない写真・絵・イラストを使用してつくったものなどいろいろな形態がある。その場合のカバーの著作権問題はどうなるのか。紙の本で出したあとに電子書籍化する場合、カバーデザインを使って電子アイコン化する場合、権利関係はどうなるのか。デザイナーと出版社の権利は互いにどこまで主張できるのか。つぎからつぎへと疑問が生じる。
出版協加盟社で、カバーの著作権についてデザイナーと契約をしているところはほとんどないと思われる。さらに、既存の出版契約書を見ても曖昧な点が多く残されている。書影の著作権問題について再検討の余地がある。
出版協副会長 成澤壽信(現代人文社)




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