取次店に関するモヤモヤ(ほんのひとこと)

 5月1日から丸善ジュンク堂書店のメイン帳合が楽天ブックスネットワークからトーハン、日販の2社へ変更になった。


 3月上旬に版元各社に流されたファックス「取引帳合変更のご案内」には、「旧大阪屋時代から長きにわたり楽天ブックスネットワーク株式会社様とお取引させていただいておりましたが、今般先方より取引条件の大幅な変更の申し入れがございました。弊社といたしましては申し入れに対し応じる事は出来ず、やむなく取引先の変更をさせていただく次第です」とある。


 神戸の“図書館みたいな”書店といわれていたジュンク堂が大阪屋とともに「こんな所にも」と思われるような全国的な多店舗展開をするようになってから、大阪屋からジュンク堂への優遇が噂されていたが、それが維持できなくなったのだろうか。


 最早半分忘れかけていたのだが、現在の楽天ブックスネットワークは、資金繰りが悪化した栗田が民再にして債務を凍結し、書店取引を新会社に移し大阪屋と合併した上で、不良在庫を返品するという、版元にとっては非道ともいうべき仕業によって成り立ったところだった(ちなみにわが社では、この「スキーム」に関する文書が、幅5cm、重量2kg超のA4ファイルに収納されている)。


 その体力が強靭であったとは思えないが、両社の取引先書店が合わさったので、以前より取引高が増えるかとも思っていたが、わが社では、そのようなこともなく現在に至っている。


 出資した楽天にとっても、単価が高く回転の遅い商品を大規模に陳列し、お客を待つといった商売のかたちを、そんなに長くは維持できない上、そんなに待てない、と判断したのではないだろうか。


 また、昨年の終わり頃から、大手取次店2社が「物流協力金」なるものの要請を個別各社へ始めた。送品1冊あたり5円程度の負担を一律、全取引社にということだ。


 以前から個別に交渉し、この機に妥協点を見出した版元もあるというが、出版協会員社の多くは中小零細版元で、そのような余裕はないだろう。


 加えて出版協会員社に対しては「会から話があったでしょうが……」と切り出して、協力金の要請をはじめたとも聞く。


 確かに説明は受けたが、会として首肯したわけでもなく、また、個別の社としての見解を示したわけでもないのだから、かなり詐取的な前口上とも思える。


 もちろん、ここに至るまでの要因はさまざまあるだろう。


 デフレが続いているといわれるなかでの近年の物流費の極端な高騰が今回の「お願い」の引き金だと思うが、雑誌を中心とした出版物全体の売上の低迷、その物流にたよった上で成り立っていた書籍流通、前世紀末からなかなか上がらなかった平均定価等々、もともと持っていた積年の構造的な問題も底に横たわっているはずだ。


 しかし、出版協が見解で示したように、多くの会員社は個別の会社ごとに異なる正味、歩戻し、支払保留などの諸条件を考慮せずに要請受け入れなど納得してできるはずもなく、余力があるわけでもない。


 かつて流対協時代、歩戻しの撤廃の交渉要件を詰める際には、取次としての採算分岐点を、算定根拠を示しながら、目標とすべき返品率を設定して各社で交渉ということをしていたと思うが、それに比べ、今回の要請はかなり手荒で乱暴ともいえる。


 そもそも取次店が用意する約定は、版元側に個人保証を求め取次側には部長クラスの役職を明記しただけのものから取引が始まり、自分たちの調子がおかしくなると、返品や「お願い」をし始め、今回の丸善ジュンク堂書店のような帳合変更があると、ナゾの返品が増え始めるのだから「お願い」でいい思いはしないことを我々は学習済みである。


 先に書いたように「第三の物流」の確保を目指していたはずの楽天ブックスネットワークが、その商売の幅を狭めた結果、取次業が実質的に大手2社に絞られた現在、もう少し丁寧な説明や方法が必要なのではないだろうか。


 などと思っていたところに、5月14日の日経新聞に「講談社など、書籍流通参入」の記事が載った。同記事では、丸紅と講談社、小学館、集英社が新会社を作り、AIやICタグを利用して流通の効率化をはかり、また、書店と直接取引を行う取次会社であるかのような報道だった。


 5月20日の新文化の記事によると大手出版社は14日午前に取次に事情説明にいったようだが、「本件における大手出版社への取材対応は、講談社が担うことになったが、この記事の信憑性については『コメントを差し控えたい』としている」とのことだ。「差し控える」というのは、「明言しないだけであって、そのつもりはある」ということなのだろうと勝手に推察する。


 その一方で、我々の規模の版元だけでなく、最大手ですら現状の取次店に対しては、不満もしくは不信があるのではないかとも推察する。


 そう考えると我々としては、珍しく「仲間」とも思えるのだが、この件で気になることが一つ。


 栗田の民再処理と楽天をこの業界に引きずりこんだ際に深くかかわったであろう版元が今度は丸紅をこの業界に引き込んで、新会社を設立しようとしているように見えるのだ。


 なんだかモヤモヤする……。



出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社

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