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身辺雑事だけど歴史的な意味あること(ほんのひとこと)

●リモート開始から15カ月


 2020年3月、新型コロナ蔓延の兆しに、リモート体制を導入した。グループ4社の内1社を独立させ、3社のスタッフのうち、①自宅リモートに専念する者、②これまで通り通勤する者に分かれた。


 神田神保町のオフィスに常勤する者が3分の1、10人程度になったため、年額800万円からの家賃は、寸法に合わなくなった。


 毎日社員が来て、相互に顔を見合わせながら仕事をしてきた慣習が、リモートという名の完全フレックスタイムになった。地位、待遇、給与が従来通りで、就業スタイルからすると「革命的な変更」が起こったわけだ。


 よくしたもので、それぞれが仕事のこなし方を工夫して、この1年あまりの間に適当な「解」を見つけたようだ。もちろん、自宅の台所の椅子が硬かったり、パソコンの性能が追いつかず、毎日のZoom会議に対応できなかったり、話し相手、相談者が周りにいない環境に不適応状態が現れたスタッフもみられたが……。また、家族間の調整が必要な家庭もあったようだ。



●60年の神保町を離れて


 21年3月、60年以上もお世話になった神保町を離れて事務所を中央線の小金井市に移した。民家を事務所風に改造して3社のオフィスにし、千葉の先からは通えないスタッフや、印刷屋さんなどとの打ち合わせ用に九段のサテライトオフィスを設けた。


 前庭と奥庭があり、花と野菜と果樹を植え、広大な小金井公園からやってくる小鳥の声を聞きながら仕事ができる。



●有難きかな「巣篭もり効果」


 このようにして、歴史エポックのコロナ時代初年度をやり過ごしたが、スタッフの出社スタイルも様変わりし、社の業務の内容、そのやり方が大きく変わってきた。いや、大きく変わらなければならないという意識が強くなってきたというべきかもしれない。


 これは後の分析に委ねたいが、いわゆる「巣篭もり効果」で、例えば、日販は20年度の決算で前年比営業利益は167.8%、経常利益も前年比181.0%と増収増益になったという。小学館、講談社などの大手版元も好調のようだ。


 幸運なことに、出版業界としては、売上前年比70%、80%減などという壊滅的打撃は起こらなかったようだ。まったく幸運だった。もし、飲食関連業界のようなことが起こっていたら、積年の体力消耗の上に輸血が途絶え、瀕死の状況に陥っていただろう。


 今と今後をどう切り抜けていくか。取次、大出版社グループでは大きな構想が動き出しているようだが、わが社はどうするか?



●わが社に起こった小さな変化


 まずは、今年3月に2名の新入女性スタッフを迎え入れ、従来の営業部の名称を「営業プロモート部」に変更し、営業志望で入社した1名に入部してもらった。名前を変えて、実行者を変えて、変化の実を挙げていこうという戦略だ。


①オンラインイベントの活用による著者、読者との繋がりの強化


②オンラインによる告知・広告の活用


③オンラインによる研修講座のビジネスモデルの構築


④オンライン会議による、内部打ち合わせの深化


⑤すべての業務でのオンライン活用


⑥経営データのオンライン化とシンプルな分析システム作り


 列挙すると、すべての改善要素がコンピュータ絡みになっていた。



●せめて四則計算レベルの活用を


 そんなことを考えながら原稿を書いていたら、ハッカーレベルの知識を持つコンピュータ技術者が来社した。


 早速、企画の初版部数、刊行1年後の最低限部数/最大限何部の予測、そうした予測プログラムを素人が創ることができるかと相談してみた。


 コンピュータの特性について委細説明のあと、結論としてそれは無理だろうというのがホワイトハッカーのご宣託だった。信頼性のあるプログラムを創るには編集者並みの知識を持っているプログラマーが、膨大な時間(人件費)をかけて創ることになるが、予測精度、費用ともに到底間尺に合わないだろうとのことだった。


 それはそうだろうなとわれに返ったが、ビッグデータを基にした〈企画成功率シミュレーションプログラム〉とまではいわないまでも、Excelを活用して経営・編集業務に活かしたいものだと思っている。



●最後に引っ越し2つの蛇足


①電話、FAXなどのリース契約にはご用心。リース残年数の全額を払わないとリース借金から解放されない。


②差入保証金の適正な額を返還してもらうのは一苦労。入居の際、保証金の返還条項を委細に確認。


 ともあれ、コロナ禍の終息があったとき、何が定着して、何が旧に復するか、歴史実験としては興味津々だ。



出版協理事 上野良治(合同出版

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