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レガシーこもごも(ほんのひとこと)

 コロナが第5類に引き下げられたため、感染者数などの発表もなくなったようだ。8日には、東京ではまだ1000人以上の感染者が出ている。本当に収束に向かっているのだろうか。周囲に感染者もでている。まだ、とてもおさまったとは言えないのではないか。にもかかわらず、とにかく終息したかのような政策をとっている。これまでのワクチンの効果、後遺症の有無、それら科学的になされたはずの検証も調査も公表されていないようだ。しかし、検査費また罹患したときの費用も、自己責任ということになる。


 オリンピックも加計と森友も例のマスクも核心的な部分はなにも明らかにならず、うやむやなままである。コロナも同じようにこれまでの政策を検証することなく、うやむやのままになるのだろうか。


 個人的には、とりわけオリンピック後の、明治神宮外苑再開発については、許しがたい。ウイークエンド・テニスプレイヤーとして、秩父宮ラクビー場と神宮球場の狭間のテニスコートで週末を過ごしているのだが、この再開発によって、テニスコートが潰されるということである。神宮球場とラクビー場の場所を入れ替えて、その間にあったテニスコートはなくしてしまうということである。再開発のために、高さ制限もなくして、高層の商業ビルを乱立させることが再開発らしい。都立青山高校、國學院高校もある文京地区でもあるにもかかわらず。さらに、外苑の森も相当の樹木が伐採される。外苑の整備そのものが、当時の国民の寄付で行われたことは、顧みられてもいないようだ。故坂本龍一氏が反対の声明を出した。すでに三井のホテルが出来ている。売り文句は、「大都会にいながら緑に囲まれる」「都心の別荘地「神宮外苑の社」で寛ぐ」である。ホテルのまわりの緑だけは残したいようだが。


 推進母体は明治神宮と日本スポーツ振興会であるが、その裏に大手デベロッパーがいる。遡れば、青山練兵場跡地であり、歴史ある空間でもある。学徒出陣の舞台となった場所がともかくもスポーツ施設がならび、平和な空間としてあることは戦後を象徴しているとも言える。今の技術力であれば、老朽化したと言われている、神宮球場、ラクビー場も、そのままに内装・外装を改装し強度を保つことなどできるであろう。国立競技場にしてもそうだったが、レガシーをうんたらとかいうにもかかわらず、レガシーを壊すことは、まったく気にかけないのが、理解できない。



 さて、話しかわって旧態依然といわれて久しい出版業界でも新たな動きがでてきた。取次が、書籍・雑誌の流通という本業では赤字ということで、トーハンは、出版社からの協力金を加えても出版流通コストは賄いきれず、「既存構造のなかで、出版流通は機能していない」とし、今後、コストに見合わない出版社の取引条件の見直しについて相談していく考えということだ。協力金というのは出版社が取次からの要請に応じて出したことになっている。建前上は、両者納得の上に応じたということであろうが、いくつかの交渉過程を耳にした限りでは、かなりの圧力のもとで協力金を要請していたようである。取引条件に協力金などという項目はなかったのであるから、取引条件の変更といえる。


 これまで、取引条件について、おおもとの正味、そして委託などの歩戻し、さらには支払い保留など、中小版元でも、概して、創業が古い版元ほど条件がいいといえるだろう。現在では全国流通をする通常ルートは、2社の取次と取引するしかほぼない。このため、取次との力関係から、中小版元の取引条件が改善されたという話しは、ほぼ聞こえてこない。


 「既存構造のなかで」ということだが、「取引条件」を見直せば、「既存構造」は維持できるのだろうか。「出版流通コスト」と「既存構造」はどのように関係しているのだろうか。


 あらっぽく考えれば、書籍については、1冊あたりの取次の取り分の金額が大きければ、流通コストを吸収できるということだろう。高価格、低正味であればいいはずである。


 3000円で68%正味であれば2040円、書店出し正味が76%(個々も正味は取引は個別で実態は分からないが)で2280円、その差額240円である。さらに価格が高くなれば、差額は増える。文庫、新書で1000円(こちらも価格がかなり上がっているが)で65%正味であれば650円、書店出し正味が73%で730円、その差額80円。定価別段階正味というものも考えていいのではないか。


 街の書店が激減しているのは、さまざまな原因もあるが、正味の問題も大きいであろう。その改定も必要であろう。もちろん、高価格のものは、本も厚く重量も多い、その分流通コストはかかる、とは言えるかも知れないが、どれだけが流通コストになるのか分からないが、協力金も、平均単価によって差をつけるのなら、まだしも理屈にあうのだが、一律5円というようなもので理解が得られるとはとても思えない。


 既存構造を維持するために取引条件を見直すのか、既存構造そのものを見直す一環として、取引条件を見直すのか。出版業界は多様性があってこそ、活性化がはかられると思う。出版業界のレガシーは、大から小までの版元の多様性、出版物の多様性ではないか。これは版元ばかりではなく、街の書店さんも、さまざまな色を持った書店さんがあってこそ多様性が生まれるだろう。版元ばかりではなく書店さんの新規参入のハードルを下げ、取引条件の格差をなくし、もちろん取次も含めた、既存構造の見直しによって戦後の出版業界のレガシーを守っていく必要があるのではないかと思うのだが。


出版協理事 石田俊二(三元社




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