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ちょっと立ち止まってみては?(ほんのひとこと)

 最近道を歩いていると、前を行く人が、夜でもないのに軽く酔っ払って千鳥足といったように、少しずつ左右に揺れながら歩いていくのを見かける。


 歩く速度は速いとはいえないので、抜こうと思いこちらが右へ一歩踏み出すと前の人は半歩右に。それではと思い左一歩踏み出そうとすると半歩左に。


 えいとばかりに大股で踏み出し、追い抜きがてらその人を確認すると、目線の先はスマホにある、いわゆる「歩きスマホ」で、前を見ている様子はなく、ワイヤレスイヤホンまでしている。


 コレではさすがに周りの様子に気付きはしないだろう。すれ違う際にも、視線と顔の向きが固定されていて体が左右に揺れながら進むので、どちらに進むのか判断がつかず、こちらの進行方向を決めかねることも多々ある。


 加えて、低速のハイブリッド車やEV車はエンジン音がしないので、普通に歩いていても後ろから近づいてくると驚くことも多い。スマホ+イヤホンでは尚更だろう。大きな事故にならなければと毎回思うが……。それとも、みんな本当に酔っ払っているのだろうか。


 ちょっと立ち止まってみては?


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 住民登録をしている限りマイナンバーは既に振られているので、どうのこうのできるわけではないが、マイナンバーカードは当人の申請で交付されることになっていて、なぜか全員に持たせたい政府は様々な手を打ってきた。コンビニで住民票が取れるとか期間限定で20000円分のポイントがもらえますとかとか。健康保険証の情報までマイナンバーカードのチップに書き込み、運転免許証まで書き込んでしまおうかという勢いだが、まあ、怪しさ後ろ暗さがいっぱいの施策が並んでいる。


 そもそもそれらの実施にあたって数々の疑問があるが判然としていない。なぜ、マイナンバー導入時にあれほど取り扱いを厳格に(=面倒に)定めたのにその番号をわざわざ券面に印刷したものをばら撒くのか。例えば、源泉徴収票の本人控えの個人番号欄には個人番号が印字されないようにしてあるほどなのに、とか、なぜ交付の際にポイントの付与にするのか。本人の身分を証明するのにこれ以上確かなものを手渡すのであれば、その際に手間隙経費が一番かからない日本銀行券をそのまま渡せばいいものを、とか、健康保険証の発行主体は各々の健康保険組合であるはずなのになぜ政府があっさり廃止などと言えてしまうのか、また、ポイント業者に政府が後押しして、個人情報を売り渡すことにならないのか、とか、健康保険証としての運用を始めて、他人のデータが表示された、そもそもそのカードのデータが読み取れない、名前の表示がちがうなど、トラブル続出なのに日程どおりに進めようとするのか、とか、マイナンバーカードを健康保険証として用いる際に必要な電子証明書は5年毎の更新なので、成長・加齢・整形等で、本人の顔写真があっという間に役立たずになる可能性があるとか、半導体不足でSuica、PASMOの新規発行を一時中止している現在から考えると、5年毎に日本の人口並みのICチップ用の半導体を確保できるのか、とか。


 ちょっと立ち止まってみては?


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 小規模事業者、自営業者が税務署にインボイス発行事業者の登録申請(≒つまり「強制ではないよ」免罪符)して番号を取得し請求書に明記しないと、仕入控除をしたい発注元から仕事がやってこなくなるかもというインボイス制度だが、そうするとそれまで免税事業者だった場合、消費税を集計して確定申告の際に納税しなければならなくなる。特にフリーランスの人たちは、お金(しかも「現金」)と時間の両方を奪い取られる。その性質上、ひとりでやるのが普通のクリエーター、アーティスト、俳優などの場合、新人の頃は決して多いとはいえない収入で続け、信頼やその実力が認められて収入が大きくなっていく仕事の場合、廃業したり、そもそもその道に進むことをやめたりしてしまう可能性が大きくなる。メーカーでもイノベイティブなところは元々ガレージメーカーだった場合が多々ある。


 また、当初は個人名で申告した場合、屋号や筆名で仕事をしていたとしても、自宅の住所等がネットで公開されたままになっていたという。税務署の前の掲示板であればご丁寧に掲示することないであろうに、少しは考えたのであろうか。


 ちょっと立ち止まってみては?


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 いずれもデジタル環境が日常のものになり、その成り立ちや先行きを考えずに利用できてしまうようになったための「デジタル酔い」かとも考えるのだが、如何だろうか。「吐き出せ」とまではいわないが、「落ち着け、はやまるな、よく噛み砕いて」事に当たるべきではないだろうか。



出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社




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