【声明】侮辱罪を厳罰化する法律案の可決・成立に対する声明

 本年6月13日、第208回国会において、侮辱罪の法定刑の引上げをする「刑法等の一部を改正する法律案」(改正案)が可決・成立した。


 日本出版者協議会は、本年5月10日付声明で、以下の問題点を指摘して改正案に反対し、即時廃案にすべきであることを表明した(「侮辱罪の厳罰化に反対する声明」https://www.shuppankyo.or.jp/post/seimei20220511)。


 ①侮辱罪における「侮辱」の判断基準が曖昧である。

 ②法律適用の第1次判断者は警察・検察で、侮辱罪の適用が恣意的にされると、表現の自由に対する重大な侵害となる。

 ③厳罰化により、「定まった住居」があり「出頭の求めに応じた」場合であっても、逮捕・勾留されることがあり得る。

 ④厳罰化により、教唆者や幇助者に処罰対象が拡大される。

 ⑤侮辱罪を厳罰化するのであれば、侮辱罪にも名誉棄損罪と同様の公共の利害に関する特例規定を付加すべきである。

 ⑥侮辱罪の厳罰化の威嚇による個人に対するインターネット上の誹謗中傷防止の効果があるのか疑問である。


 国会では、厳罰化によって逮捕の条件が緩和され、政治家や公務員への批判など表現の自由に対する重大な制約になるおそれについて議論された。政府は、「正当な言論活動を処罰対象とするものではない」とする見解を表明し、法務大臣や国家公安委員長が、「現行犯逮捕」はあり得ないとも発言をしている。しかし、2019年の参院選の際、安倍元首相が札幌市内で行った街頭演説で「安倍辞めろ」などと声を上げた市民2人を北海道警が排除した例をみるまでもなく、現場でどのような判断がなされるか不透明である。


 また、施行3年後に、外部有識者による施行状況の検証とそれに基づく見直しや侮辱罪へ公共の利害に関する特例規定の検討を求めることなど附帯決議もなされた。しかし、そうした附帯決議では、上記で指摘した問題点は払拭されたとは言い難い。侮辱罪の対象範囲は依然として不明確であり、正当な表現として保護される範囲が不明である。


 以上のように、日本出版者協議会は、言論、出版及び表現の自由の擁護を目的とする団体として、侮辱罪の厳罰化によって表現の自由に対する不当な制約が行われないよう、その運用状況を一層監視するとともに、規定の見直しを今後も追求していくことを表明する。


以上



2022年6月20日

一般社団法人 日本出版者協議会

会長 水野 久

東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B

TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104




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