存在有理(ほんのひとこと)

最終更新: 2019年1月9日

 かつて古くからその土地で営業している店の斜向かいに、同業の資本の大きなチェーン店が出店した。

 チェーン店は集客のため、ポイント付与などを展開し何とか開店は成功したといえた。

 決して利の厚い商売ではない。

 古くからの店はたたむ事になった。

 ライバルはいなくなった。

 その地域の需要を独占することになったチェーン店だが、採算が合わないと判断され、閉店を余儀なくされた。

 結果、その地域には同業の店が1件もなくなった。

 数年後、当のチェーンそのものが他の資本の下に入ることとなった。

 ライバルも消えたが、自分も実質的に消えたのである。


 噂にはなっていたが、ついにそのときが来た。

 民事再生手続き開始を申し立てたその会社の債権者集会で示された計画案は、売掛金は凍結する上、後に吸収される同業他社からの返品を買い取れという、「再生スキーム」だった。

 多くの債権者にとっては、回収見込みの立たない債権と返品の二重の負担を強いられる話である。

 当然多数の債権者は肯んずることなどできず、質問、撤回要請が示された。

 1年9ヶ月後、それまで、当初示された「スキーム」に変更を加えられ、債権者にとって多少負担が軽減された弁済率によって、最終的な弁済がなされた。

 その約1年半後、吸収合併し再スタートした会社は、経営不振をささやかれることになり、その噂どおり半年後には、再出資をうけることになる。


 11月19日付の「新文化ONLINE」によると、日販とトーハンは、物流協業の検討を開始する基本合意書を11月7日に締結し、両社よりメンバーを選出してプロジェクトチームを発足することを決めたという。

 春先から公取へ物流協業に関する事前相談を行っていて、10月12日に公取から回答を受けたらしい。

 「独占禁止法遵守の観点から、両社において取引などに関する機微情報の厳密なコントロールを行う」というが、どのようになるかはまだ不明の点が多い。

 ただ、疲弊した業界に対して公取が協業を了承したということに大きな意味を持つだろう。


 しかし、先般より取り上げている、取次配本遅延問題は、単純な「遅延」だけで済む問題ではない。

 再三の指摘になるが、通常から三週間の遅延は単なる三週間ではないことを再確認して欲しい。

 その月初めに作ったものが翌月の売上になってしまうということは、規模が小さい版元にとっては死活問題なのだ。

 協業が一方的に推進されて、出版社に大幅に不利に働けば、仕入れるべきものを供給する者がいなくなるということ可能性が生じるということだ。


 「造反」ではない。「存在」有理である。

 現行の制度やものが、現にそのようにあるのは、何がしかの理由(ことわり)があってそこにあるはずだ。そのことに思いを致さず、「できるから」「やれるから」「効率的だから」という思い込みで、変更してみたり、なくしてみたりすると、それによって困難や苦境にあう人が必ず生じる。

 現状を変えるというのであれば、現状を続けていくことによって生じる痛みと現状を変更することによって生じる痛みを勘案し、双方の痛みをより軽減する知恵を働かせた上で、なおかつ生じる痛みを引き受ける覚悟をすべきではないだろうか。


 それでも敢えて変えざるを得ないのであれば、利害関係者をできる限り集め、ありったけの知恵を絞り、要求すべきことは要求し、妥協すべきは妥協し、互いが生き残る可能性を探る必要があるだろう。


 今年は、そんな年になるのだろうか。


出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社

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