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消費税雑感(ほんのひとこと)

 いよいよ10月から消費税が8%が10%になった。平成のはじめに3%で導入されたとき、税込で表記するのか、端数はどうするのかで右往左往していたことが思い出される。

 税率アップに伴って、今回から軽減税率の適用が始まり、キャッシュレス決済を導入すると助成があるやら、軽減分と分けて表示しなければならないであるとか、発生しうる事態が複雑で、半年から1年半は混乱必至であろう。


 もともと課税、非課税、対象外、不課税など分けられる上に、免税との相違などがある上、9月までの8%のうち、国税分は6.3%、地方分は1.7%であったのに対し、10%のうち、国税分は7.8%、地方分は2.2%になる。加えて10月からの軽減税率の8%のうち、国税分は6.24%、地方分は1.76%となる。

同じ8%でも10月1日からは中身が異なるのだ。

 導入時期も3%、5%、8%のときは、年度始まりの4月であったのに対し今回は年度の真ん中、10月からの導入になる。しかも、年度途中から元号も変わっている。


 これで混乱しないほうが難しい。


 また、この業界の取引慣行に付いて回るものといえば返品。

 通常、売上が発生すると売掛金の中に仮受消費税ともに計上される。9月までに納品した1000円ものは1080円で売掛金になるが、10月以降にその商品が返品となった場合、1100円で買い戻すことになり、売掛金がマイナス20円となり、同じ商品が往復しただけで、2%分払い戻さなければならなくなるのだ。

 一応、取引の仕組としては、頭では理解しているつもりなのだが、税率が上がるたびに腑に落ちない感じが残る。

 これで軽減税率が適用されていると、先の8%の中身の違いを計算しなければならなくなっていたはずだ。


 もちろん事業者としては、消費税は受取るだけでなく支払う側でもある。大雑把にいうと、通常の諸経費の支払には消費税を付加して払っていて、この仮払消費税を受取消費税から差し引いた金額を納税することになる。

 納税額を抑えたい場合、仮受と仮払の差が小さくなるようにと考える。


 ところが、事業を営む上で「不課税」となっているのが「人件費」である。つまり、支払った額のうち、他の費用であれば消費税額を仮受から差し引きけるが(100円払ったとすると、約9円)、給与や賞与などはそのまま出費ということになる。通常の雇用形態であれば、この上社会保険料の折半分などが必要となる。

 現金の流出を少しでも抑えたいと思えば、人手の手当の方法として、派遣や業務委託契約ということを考えるようになる。また、被雇用者にとってみれば、雇用そのものの不安定化や手取収入の減少を招きかねない。

 先行きが不透明であれば、お金を使わずに備えておこうと考えるのが自然であろう。本や雑誌なんか買っている場合ではないのだ。


 実はお金を使わず備えておこうという心持ちは、事業者側には別の理由でも発生する。

 

 消費税の納税額は確定申告時に決まるのであるが、翌年は前年の納税額に

応じて中間納税をしなければならない。前年の国税分の納付額が48万円以下は確定申告時に1回、48万円超400万円以下は半期と申告時に計2回、400万円超4800万円以下は、3カ月ごとと申告時の計4回、4800万円を超える場合は毎月収めることになっている。

 この金額の区分は変わっていないはずなので、10%の場合、国税分が6.3%から7.8%になり、約23.8%納税額が増えるため、48万円以下で済んでいた場合で59万円超となり、年2回の納付、400万円以下で済んでいた場合で495万円超となり、年4回の納付となる。

 売上や利益が前年度を上回っていれば、入ってくる現金がある程度確保されるので大きな不都合はないかもしれないが、同じ程度の場合や下回り始めた場合、資金繰り上、大きな負担となってくる。それゆえ納税準備のために今まで以上の現金を準備しておかなければならなくなる。

 そして、これまで何とかトントンでやってきたような小規模の事業者は、事業継続が困難になるのは明らかだろう。来年の春までに廃業してしまおうと考えることもありえる話だ。


 このようなことは、税率が上がるたびに発生する。それは、納税のために手許に置かなければいけなくなる現金が増えていくことでもある。これでは、世の中にお金が回らなくなり、不景気に拍車がかかるのではないだろうか。


 このような状況で、誰が幸せになるのかが、ここのところのギモンだ。


出版協理事 廣嶋武人(ぺりかん社


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