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新型コロナウイルスショック(ほんのひとこと)

 新型コロナウイルス感染症は、第2波といわれる拡大がつづいている。いまだ終息の見通しがたっていない。

 出版協は、6月末から7月はじめにかけて、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、会員各社が経営・出版活動にどのような影響を受けたのか、その現状と対策について、会員73社と賛助会員が所属する9社の計82社あてに、「新型コロナウイルス感染症による影響についてのアンケート調査」を行った。調査の対象期間は3月から5月までで、23社から回答を得た。

 以下では、そのアンケート結果を若干紹介するとともに(詳細は、出版協ホームページを参照ください)、小社の現状について考えてみた。


 Q1(新型コロナウイルス感染症の拡大が、会社経営に影響をおよぼしていますか)について、全体の8割の社が影響がでていると回答した。

 そこで、Q3で、3月から5月までの売上について、前年同月を「100」として聞いた。回答していない1社を除いて平均をとると、前年比3月76.3%、4月72.7%、5月67.7%となっている。徐々に影響が拡大していったことがわかる。これは東日本大震災後の売上減とは比べられない程大きい。6月以降が心配である。

 3月以降、売上が月平均28%程度も下がっている。この数字は自治体が行っているセーフティネット4号の認定条件である3カ月間の前年平均比20%減を超えている。各社の経営状態はかなり厳しいところに追い込まれていると思われる。出版社にとって、90年代以降ずっと厳しい状況が続いていたので、各社とも余裕はない。余裕がまったくない中でのコロナショックは経営の根幹を揺るがす打撃になりかねない。

 小社での売上減の大きな原因は、他社と同様に政府の緊急事態宣言以降、大型書店の休業、大学休校による大学生協の休業、ネット書店のカート落ちが続いたことである。小社の主力書である法律実務書については、裁判所の公判延期や弁護士会の休業があったため、その施設内にある書店の休業がとくに影響した。また、新刊点数の減がそれに拍車をかけた。著者との打ち合わせを控えたことや慣れないリモートワークによる編集作業の遅れなどがその原因である。

 この減少幅は、東日本大震災直後の数か月と比べても大きいし、その回復の速度が遅いことが懸念される。さっそく、政府や自治体のコロナ危機対応策の助成金や給付金などを申請した。しかし、これは短期の救済策でしかない。後で述べるリモートワークなどによる編集・校正作業の遅れを回復させて、新刊点数を通常に戻し、書店売上を回復させることは急務である。

 

 政府は、感染症予防のために、在宅勤務やリモートワークを推奨しているが、その点についてQ2で聞いたところ、ほぼ9割に近い社が実施していると回答した。実施した社員の割合では、全社員が6社で30%、8割が6社で30%、7割と5割が各3社で15%となっている。小社では、販売・総務関係でリモートワークができない業務を除いて、3月より実施している。およそ6割程度行っている。

 編集業務では、リモートワークの比重はより高い。普段から原稿整理・校正など書籍制作を自宅で行っていることも多く、そうした業務がリモートワークに親和性をもっているものと思われる。

 しかし、新しい企画のための著者開拓の点では、リモートワークは限界がある。各種イベントへの参加や著者との対面での打ち合わせは必須であるからである。長期的には、企画面で影響がでるのではないかと不安が残る。

 さらに深刻なのは、従来対面でしていた書店営業であろう。感染防止のため、8割の社が書店営業を行うことができなかったと回答している(Q5)。これに替わるものとして、出版協会員社のパイインターナショナル代表・三芳寛要さんが中心になって、「書店向けWeb商談会」を6月にその第1回を開催した。新たな対応策の一つとして特筆に値する。


 新型コロナウルス感染症を完全にコントロールするには、今後1年以上かかるとの見解もある。コロナショックは長期になるだろう。これを乗り切り、出版文化を維持していくためには、積極的な対応策が要求される。出版協の理事の一人として、情報提供の場をさらに設けたい。



出版協副会長 成澤壽信(現代人文社

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