top of page

ようこそ、新人さん!―これからの「出版」について思うことあるいは普請中(ほんのひとこと)

 2023年になって早くも2カ月が過ぎた。寒波到来のため春は名のみの風の寒さや……。出版界はあいもかわらず寒波が居座り続けている……ような気もする。


 先般、出版科学研究所が2022年の出版市場(推定販売額)を発表した。2022年の「紙+電子出版」市場は、1兆6305億円で前年比の2.6%減で、新型コロナ禍前の2019年比では5.7%増であった。


 紙の出版物推定販売額は、前年比6.5%減の1兆1292億円。内訳が、書籍は同4.5%減の6497億円、雑誌は9.1%減の4795億円。新型コロナ禍前の2019年比では、紙全体が8.6%減、書籍が3.4%減で、雑誌が14.9%減であった。


 書籍は、2022年ベストセラー1位の『80歳の壁』(幻冬舎)も発行部数が60万部弱と小規模になったという。

雑誌は、月刊誌(コミックス・ムックを含む)が前年比9.7%減の4017億円で、週刊誌が同5.7%減の778億円。月刊誌の減少は、コミックスが二桁減と落ち込んだのが大きな要因という。


 電子出版市場は、前年比7.5%増の5013億円で、出版市場全体における市場占有率は30.7%。そのうち、電子コミックが8.9%増の4479億円、電子書籍(文字モノ)が0.7%減の446億円、電子雑誌が11.1%減の88億円であった。そして、電子出版市場における電子コミックの市場占有率が89.3%となった。



 文字通り厳冬のなかにいるわれわれのもとへ、大学を卒業したばかりの「新人」が意気揚揚と入社。不況が続く世界へなぜ飛び込んだのか。半年経たいま、率直に訊いた。


―不況が続く出版界へなぜ身を投じたのですか?

 「時代の流れと共に情報の断片的な消費スピードは加速を続けていますが、そのような情勢のなかであるからこそ、確かな情報を一冊の本としてまとめて読者に届けるという出版業界の仕事に関心を持つようになりました。出版不況が続いているのは事実でありますが、本という媒体への信用や需要が将来的に消滅することはないというのもまた事実であると考えております」


―本を「つくること」「売ること」の面白さ、大変さについてはどう思いますか?

 「わたしはまだ本をつくったことはありませんので、その作業がどのように面白いのかを体感したこともありません。本を売ることについては、新聞広告の製作や自社ホームページの更新作業などを通して、その面白さと大変さを徐々にですが体感しております。売ることの面白さは、自分の考えた工夫が数字に反映される点にあると感じています。ホームページのレイアウトを変更することによって読者の方々のアクセス数を上昇させるなど、細やかな改善の積み重ねにより、売り上げが変化する点がその一例として挙げられます。しかし、自分で改善案を考え、創意工夫を続けなければならないという点は面白さであると同時に、大変さでもあると考えられます。また、そこに生じる責任というものもあり、常に気を引き締めながら作業にあたっています」


―版元という会社についてはどのように考えますか?

 「業務における個人の裁量が大きいですが、それはワンマンプレーを意味するのではなく、企画会議などの意見交換をすべき場面では入念に社員間でコミュニケーションをとっている印象を受けました。このようなバランス感覚こそが出版社という組織の特色であるように感じられます」


―「編集」という仕事についてはどのように考えますか?

 「まだ入社したばかりなので書籍の編集を行なったことはありませんが、将来的には編集者としての業務にも携わりたいと考えます。彩流社では編集者の業務に組版が含まれており、製作への直接的なコミットメントが要求されると考えられるので、その要件を満たす人材となるために切磋琢磨して知識とスキルを蓄えていきたいです」


―担当する「広告」についてはどのように考えますか?

 「新型コロナ感染症の流行により、対面してのイベントや書店営業などは以前に比べ困難となりました。こういった情勢において、広告製作・掲載は版元が情報を拡散するための手段としてよりその意義を増してきていると感じております。広告は書籍の販促のみならず、その版元の存在自体を対外的に知らせる機能を持っており、そうであるからこそ、内容に誤りや偽りのない広告を掲載することは著者や読者の方々が版元に抱く信頼感といった印象の発生にも繋がるのではと考えています。この信頼感を崩さぬよう注意しつつ広告のコピーなどを製作することが重要であると日々実感しております」



 「見廻せば、じつにびっしりと私たちを取り巻いている暮らしの道具のなかにあって、本という道具だけはいつまで経っても年を取らないでいるのがこわいと思うまで不思議なのである」(『戦後出版の系譜』日本エディタースクール出版部、1976年)と田所太郎氏が記したのはかれこれ四十数年も前のこと。しかしいま、版元・取次・書店を取り巻く状況は大きく変わった。それゆえに、新人の活躍には大なる期待を抱くのである。



出版協理事 河野和憲(彩流社




閲覧数:110回

Commentaires


bottom of page