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インボイス制度が導入された(ほんのひとこと)

 インボイス導入直前の23年9月22日に、早くも犠牲者の投書が新聞に掲載された。予想はしていたが、公表された事例のこれが第1号かもしれない。


 51歳で個人事業主を始めて10年ほど、フリーランスで店舗をめぐって販促営業をしている女性。「免税事業者のままで(契約を)続けるか、課税事業者になるか」を契約先から確認されたという。当面免税事業者のままで続けたいと伝えたところ、「免税事業者の場合、当社にとって消費税負担が増えるため、それを踏まえて取引を考えることになるものと思われる」という回答が来たという。


 政府は、慌てたふりをして「だめよだめだめ、弱い者いじめ」「6年間の激変緩和措置を用意したでしょう」と説明しているが、この出来事がインボイス制度の当面の「効果」なのだろう。


 彼女の身にどんなことが起きるか、インボイス導入の結果を考えてみよう。


 ①契約が維持される。ただし、支払われる報酬が減らされる(支払い側にとっては、いくらまで減額して支払っても適法なのか、あるいは消費税肩代わりの実害がない金額はいくらか、面倒くさい計算になるが……)。


 ②契約が解除される。契約先が彼女に代わる営業業務委託先を探す(契約先にとっては、新たな委託先が課税事業者(インボイス取得者)ならもっとよい)。


 ③非課税業者の消費税分は肩代わりされなければならない(肩代わりした消費税は6年間の経過措置を適用して、3年間は20%、次の3年間は50%の経費算入できる/7年後には全額肩代わりすることになる)。非課税措置の廃止というわけだ。したがって、委託業者、個人事業主ともに消費税増税になり、その支払いで資金繰りに窮することになる。


 ④大企業の中には非課税業者の消費税分を肩代わりして払い、非課税業者と言えども契約は解除しないと表明しているところもある。15%、20%と消費税率が上がっても肩代わりし続けると経営判断しているならすごい。


 

●消費税率アップへの布石


 なぜ、インボイスが必要なのか、現行の8%10%の複数税率が導入された時点での課題があったのだという指摘は以前からあった。複数税率の下、納税金額を正確に把握するためにインボイス(支払額、税率などが明記された請求書、納品書)が必要という訳だ。今になって政府の担当者が、複数税率とインボイスについて説明しているようだ。


 今後、消費税率を上げていくためには、高額商品には税率を高くするというサルでさえ騙されてしまう「朝三暮四」の目くらましの手法が必要なのだろう。金持ちの買い物からは税金をたくさんとっている、の隠れ蓑である。そう言えば、コンビニで買って外で食べると消費税が8%、店内で食べると10%というのはいまさらながら意味がわからない(いちいち聞かれないし)。複数税率? インボイス導入? 消費税率アップの準備だったと理解すれば腑に落ちる。

 


●わが社はどうするか?


 出版協で会員者へのアンケート調査をした。9月の段階で、著者、外注者を含めてインボイス登録したと回答を得た支払い先が2~25%だった。


 何百件にも上る支払い先のインボイス取得の確認は手間のかかる作業である。皮肉混じりに言うと、非課税業者だと思いますが、消費税の上乗せを希望されますか?を確認する作業をしなければならない。


 実施まで1か月を切った段階で、まだ方針を決めかねている、制度がよくわからないという会員が半数以上いた。


 政府にとっては「非課税業者って俺のこと?」という程度の社会的認識状況がちょうど良いのかもしれない。わが社でも、年初にインボイスを取得したかどうかの照会(著者、外注者)をしたが、2%程度からインボイスを取得したとの回答があったのみだった。


 非課税業者のほとんどはインボイスを取得しないという前提で、肩代わり消費税の額を推計する必要がある。「今年度の消費税納税予想額を算出して」その20%を肩代わりする。だが、7年後に全額肩代わりすることになる。


 印税の支払いも別途に消費税をオンして支払うか・印税算出額には消費税が含まれているという説明をするかだ。


 【消費税肩代わり方式】は、徴税側のご都合主義で、インボイス制度の運用が今後曖昧になっていくと予測しているが、【インボイス時代】左右前後を見て、一件一件個別に対応していくことになろう。


 それにつけても、「他の出版社は印税に消費税を加算して払ってくれるよ。オタクの社は違うの?」が著者、外注者との関係を危うくするフレーズであることは間違いない。



出版協理事 上野良治(合同出版



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