海象社『カウントダウン』(今月の一冊)



カウントダウン 世界の水が消える時代へ レスター・R・ブラウン/著 枝廣 淳子/監訳 定価 2,200円+税 四六判・並製・272頁 ISBN 978-4-907717-64-3 C0036 2020年8月1日発行

海象社


 私たちは飲む500倍の水を「食べている」、とレスター・ブラウンは指摘する。一人が一日に口にする食料生産には約2000ℓ、つまり飲む水の500倍の水が必要だというのだ。世界で続く人口増から食料生産に必要な水の需要は増え続けており、多くの国で深刻な問題が生じている。河川や湖沼の水だけではとうてい賄えず、地下水(帯水層)によって食料生産が支えられてきたが、膨大な汲み上げ量が長期にわたって涵養量を上回ってきたため、主要帯水層で数万年前から溜められてきた地下水(化石水)すら使い果たされようとしている。地下水位は大きく低下し多数の井戸が枯れ、砂漠化や砂嵐によって何万人、何十万人もの水難民が発生している。そして世界の食糧生産量はいま増加から減少へ転じようとしている、毎年8300万人もの人口が増え続けているというのにだ。


 『地球白書』や『プランB』など環境問題について数多くの提言を行ってきたR・ブラウンが水問題に切り込んだのが本書だ。アメリカ、中国、エジプトなど世界各地の具体的な事実に基づき、「主要帯水層の枯渇が危機的になっており、このままでは地球文明は衰退から崩壊への道へ向かう」と警鐘を鳴らす。そして、人口対策のほか、灌漑システムの改善や水利用効率の高い作物への転換、水を大量に使う石炭火力発電を再生可能エネルギーに転換することなどを提言している。

 降水量が多い日本では水不足は体感しにくいが、食料自給率は40%しかなく大量の食料を輸入せざるをえず、それは生産国で使われた水(バーチャルウォーター)を輸入していることと同じといえる。年間のバーチャルウォーターは約800億ℓとも試算されており、これは日本国内の年間水使用量に匹敵する。日本は世界の水不足を加速させている面があるだけでなく、主要輸出国の水不足は輸入食糧の値上がり・途絶として近い将来、日本を直撃する可能性もある。R・ブラウンの警鐘は日本にとっても他人事ではないのだ。

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