拡散させてはならない「コロナ差別」

 昨年12月に中国の武漢で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)はまたたくまに世界中に広まりました。日本においては感染拡大への対策として2月末に突然の全国の学校への休校要請、4月には緊急事態宣言を発動し3密の回避や社会活動、経済活動の自粛を要請します。感染拡大の縮小化に伴い宣言は解除されたものの第2波、第3波の懸念はつづいています。


 効果のある薬の開発や「発見」、ワクチンの開発、医療体制など医学・医療面がかかえる大きな問題とも関係していると思いますが、「コロナ差別」と向き合わなければならなくなりました。医療従事者やその家族、福祉関係従事者、スーパーやコンビニなどお店で働く人、宅配業者、運転手など、エッセンシャルワーカーに対する差別、排除や暴言です。感染者に対する憎悪や身元暴き、解雇をされ職や更には住居を失う人、「夜の街」と名づけて特定の職種や地域に対してのバッシングもおこりました。


 エッセンシャルワーカーについて考えてみたいと思います。緊急事態宣言下で多くの書店がしまりました。その代替えをしたのがインターネット書店などだと思います。本を求める方は直に書店に行かずに自宅などに届けてもらえるわけですから感染リスクは少なくなるはずです。しかしながら版元から購読者に本が届くまでには当たり前に人がかかわります。版元からの取次や書店への納品は版元自身、印刷・製本所または倉庫業者からの人によります。品分け、届け先明示にも人がかかわります。いよいよ購入者への届けは宅配業者ではないでしょうか。町の本屋やスーパーなどでも、生産者や製造元からお客さんに品物が届くまでにも同じく多くの人がかかわります。「自粛」を要請する一方でその自粛に応えるためにたくさんの人が「非自粛」をしなければなりません。「8割程度の自粛を」とありましたが、2割にエッセンシャルワーカーが含まれていると考えられるでしょう。「非自粛」を担う人たちに対する差別的な対応や排除、暴言などを許していいはずがありません。


 この構造は食肉を食べる人と食肉をつくる人との関係に似ていると思います。食肉ができるまでは酪農農家・酪農牧場→屠畜場・屠畜→セリ・問屋→肉屋・スーパー→消費者だと思います。この中で酪農についてはさまざまに見たり、聞いたりすると思います。「美味しい肉」は大歓迎でいろいろと知るところです。他方で豚や牛がそれぞれ豚肉、牛肉になる過程やそこで働く人はあまり「見えない」と思います。「見えない」背景には忌避や排除などがあると思います。屠畜労働者などが自身の仕事を第三者などになかなか言いにくい、話すのをはばかる現状がガンとしてあります。この現状は屠畜労働者たちがつくっているのではないことは当然です。本を手にいれる、焼き肉を食べる「受益者」は宅配業者や物流関係者、屠畜労働者などを介してなりたっています。また、ある屠畜労働者だった方は、屠畜をしているときに険しい顔をしているのを見た人が(屠場見学かと思います)「生き物の命をうばっているのでその後ろめたさでそのような顔をしているのだろう」と言ったことに対して反論をしています。牛は育成者からの預かりもので、肉にしていく作業工程でのミスで肉にキズをつけたりすると、セリでの値段が落ちてしまい生産者に大きな損害をあたえてしまうことになる、その責任を考えながら仕事をしているのだということです。険しい顔はいい肉をつくるのだというプライドの反映ということでした。このコロナ禍で「非自粛」を担うということは、声が届くかどうかはべつとしてプライドや使命感をもってのことと考えています。


 エッセンシャルワーカーに対してはここで述べるまでもなく感謝し、共感し差別や排除などについては否としている方がたくさんいると思います。しかし、一方でまた感染拡大がはじまったときにはその恐怖心や優越感などから差別や排除、身元暴きなどが拡散してもおかしくはない現状だと思っています。


 自戒の念もこめて少し考えを言わせていただきました。



出版協理事 髙野政司(解放出版社


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