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耳で聴く出版営業列伝「公開書店営業 in スペース」(ほんのひとこと)

 「営業さんの話って面白いよね。僕だけが聞いているのはもったいない。あの熱量を一般の人にも届けられないかな」。千駄木往来堂書店の笈入(おいり)店長のこの一言からインターネット上のラジオを始めました。「公開書店営業 in スペース」という番組です。笈入さんが聴き手役となって、出版各社の営業担当者が本を紹介します。私はサポート役です。


 普段、出版社の営業職は、全国の書店を訪問し、書店員さんに本を紹介しています。本の内容だけでなく、その本がどうして生まれたか、どんな苦労があったのか、どんな想いで作っているのか。一般の方の耳にあまり入ることのないこうした熱い想いを、ツイッターの「スペース」というラジオ機能を使って配信してしまおう、という試みです。


 本の紹介に対して笈入店長が感想を伝えながら実際にその場で発注します。「いつも通りでいいですよ。夜の番組なのでリラックスして」と伝えていても、一般公開ですから、話すほうはなかなかの緊張感です。しかもその場限りで終わらず、録音してアーカイブとしポッドキャスト上で配信され続けるので、下手なことが言えません。敷居が高いので引き受けてくださる営業さんは少ないだろうと思っていましたが、これまでに20社の出版社の方が登場し、今も隔週ペースで続いています。


 紹介の仕方は本当に千差万別です。例えばみすず書房の河波さんは、いかに自分自身が本に支えられてきているか、本への深い愛情を伝えてくださいます。朝日出版社の橋本さんは、本の注目すべきポイントだけでなく、どんな時にその本を自分自身が読み、どんな人に贈っているかをご紹介されていました。みなさん一冊の本の魅力を、時間をかけて丁寧に紹介してくださるので、聴き終わったころにはすっかりその本を買いたくなっています。美術展で学芸員の解説を読みながら作品をゆっくり鑑賞すると、最後には図録が欲しくなるのと感覚が似ています。実際、「ラジオを聴きました」と言って往来堂さんに本を買いにくる方もいらっしゃるようです。


 リスナーは一般の方だけでなく、全国の書店員さんも聴いており「笈入店長からの質問や感想が参考になる」という方や、「おもしろそうなフェアなので自分の店舗でも検討したい」などの感想をいただきます。時には紹介している本の著者本人が聴いていることもあり、せっかくだからとその場でお話しいただくハプニングもありました(左右社さんの回)。そして出版社の方も聴いています。本の話題が好きなこともありますが、他社の営業の仕方が参考になるようです。私も同業として、みなさん本当に上手だなあ、と勉強になっています。例えばエクスナレッジの伊藤さんは、まず本のテーマについて聴き手に質問を出し、相手に考えさせることで関心をグッと引き寄せたのち、どんな方が読者なのかを実に適切に例を示されていました。評論社の池水さんは、自社の本だけでなく他社の類書と合わせて棚づくりの提案をされるので、とても説得力があり信頼感があります。こうした他社の営業スタイルに触れる機会は無いので、このアーカイブを「とりあえずこれ聴いておきなさい」と、出版社の社員教育にも使えるのではないかなと思います。各社が上手なところを学び合って、業界全体の提案力が上がり、店頭にもいい影響が出ることを願っています。


 また本来は黒子である出版社ですが、「中の人」の声を聴いて出版社のファンになることもあると思います。就活生にとっても会社の雰囲気を知るよい機会になるでしょう。柏書房さんや雷鳥社さんはアットホームな雰囲気が伝わってきましたし、ライツ社さんやナナロク社さん、サンクチュアリ出版さんは明るくて楽しそう。クールで知的な書肆侃侃房さん、哲学が大好きなミシマ社さん、スポーツ大好きカンゼンさん、はんなり素敵な青幻舎さん、さすが自由な亜紀書房さん。社長さんが登場する回もあります(ライツ社、皓星社、新星出版社、作品社)。出版社といえば編集者のイメージがありますが、出版営業という仕事があることも知って欲しいです。


 なんにせよ公開で営業トークを行える出版人は相当のつわものと言ってよいので「出版営業列伝」としてもお楽しみいただけます。ご興味のある方は、Twitterの往来堂書店のアカウント(@ohraido)をチェックしてみてください。リアルタイムでご参加いただけますし、質問や感想も受け付けます。そして「こんな出版社に出演して欲しい」というご要望や、自薦も受け付けております。オンラインで行うのでどの地域の出版社もお気軽に参加できます。また過去の回をお聴きになる場合はSpotifyやApple Podcastで「往来堂」と検索してみてください。移動中に聴いたり、バックヤードで作業中に聴いたり、洗濯や洗い物をしながらなど、「ながら聴き」がおすすめです。


 Spotifyへのリンクはこちらです↓



出版協理事 三芳寛要(パイ インターナショナル




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