用紙代値上がりで……(ほんのひとこと)

 残念ながら、いまだコロナ収まらず、東京都の感染者もまた増加している。Withコロナとはいえ、身近にも感染された方が、まま見受けられるようになった。幸いにも、社内、会社のご近所さんにはいまだ感染者は出ていないが。


 売上にコロナの影響がだいぶなくなったと思われるところに、今度は、円安による物価高、加えて、用紙代などなどの値上げという事態になった。


 用紙代の値上げは、大幅なもので、今後の本の価格に影響が出ることは間違いない。新刊については、価格を引き上げざるを得ないと思われる。値上げがどの程度かは各社によってまちまちであろうし、売上にどの程度影響してくるかも分からないが。


 既刊書の増刷にあたって、その価格を据え置くか、あるいは値上げするかが悩ましい所である。というのも、増刷するにあたって、店頭在庫がすべてなくなっている状態にするにはかなり時間がかかるので、値上げすると価格の違うものが店頭に並ぶことになってしまうからである。あちらの書店とこちらの書店で値段が違うということもありうる。本来は、望ましくないのだが、それでは、店頭在庫をすべて返品してもらうというのも、なかなか難しい。また、ISBNを変更せずに、価格を変更するのは、小社のシステム上では無理があるので、別のISBNを付けざるを得ない。内容はまったく同じなのに、別の本として扱うということになってしまう。


 また、以前使った本文用紙、さらにはカバーや見返しの用紙などが廃番となってしまうことも、増えてきた。大方、代替え用紙で束厚が同じものがあるのだが、ない場合は、カバー・デザインを若干修正しなくては、使えなくなってしまう。ここでも、さらにコストがかかることになる。


 各社、原価上昇分をどの程度価格に反映させるのか、悩んでいるのではないだろうか。大手版元でさえ、文庫や新書の用紙を共通にして、なんとか価格を抑えようとしているぐらいなので、とりわけ、小零細版元の場合は、価格交渉力は極めて弱いので、上がったなりの価格をのまざるを得ない状態であろうから。


 こうなると、電子書籍は用紙代がない分、価格に影響はないので、とりあえず増刷は電子書籍でということも考えなくては、いけないかも知れない。


 とりわけ、国会図書館の電子配信が、急速に進み始めたため、その流れがより一層強まりそうである。もちろん、通常の図書館で借りられない貴重な本や史資料を気軽に見られるのは、利用者としては大変有り難い話ではあるが、これが直近に流通していた書籍までとなってくると、版元にとっては頭の痛い話となってしまう。


 市場で品切れ状態だと国会図書館に判定されれば、配信対象にリストアップされることになっている。リストアップされても、一応オプトアウト出来ることにはなってはいるが、そのためには、法律の規定では、3ヶ月以内に品切れを解消しなくてはならない。専門書関係では、3ヶ月というのは、あまりにも短いと思われる。社内在庫が切れてから増刷に入るまででも、様子を見ながら、本が出来上がるまでに2~3ヶ月はかかる(よほど売れ行きがいいものでないと)。初版が売り切れてから、何年かしてやっと増刷できる、といった本もままある。このため、実際の法律の運用をどのようにするかによって、版元の負担はかなり違ってくる。


 現在の国会図書館納本制度は、昭和23年(1948年)からあるので、それ以降の本は、国会図書館はいつでもデジタル化することができる。なんといっても、原本があるので。


 紙の本での増刷がすぐには難しいとなると、ともかくも、電子版をつくって流通させなくては、その後の増刷もできなくなってしまうことになる。こうして電子書籍化は進むことになるのかもしれない。けれども、一般の書店さんでは、電子書籍を今の所扱ってもらえない。電子書籍販売の実証実験ははじまったようであるが、まだ時間がかかりそうである。かといって、電子書籍で圧倒的なシェアを持つ某ネット書店には、頼りたくはないのだが。


 旧態依然といわれていた出版業界も、ここ十数年でかなり変化し、さらにここ数年で大きな変化を迎えていることは確かである。が、今のところ、小社のような規模の版元では、人員的にも、旧態依然のやり方で紙の本を刊行していくのがやっとである。少しずつでも変化に対応していこうとはしているのではあるが、取り残され気味であることは間違いない。


 とはいえ、本を作るということに、変わりはないので、そこはこれまで通りにやっていくしかない。紙の本であれ、電子書籍であれ、企画・編集といった作業に変わりはないので。もちろん、著者の方々は、書く、発表する媒体が多様になっており、それに合わせて書き方もさまざまになっている。それらをまとめ、1冊の本にするという点では、企画・編集のあり方も、変わってはきていると思うが。


 また国会図書館のデジタル配信で古書店さんは、どうなるのだろうか。もちろん、物としての本の価値を考えれば、古書店さんの重要さは変わらないのだが、どうなのだろう。



出版協理事 石田俊二(三元社



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